「コリアンドル」は、すっごく、すごく大好きなアルバムだ。
ちょっと、というかかなりクセがあるから人にはそんなに薦められないかなぁなんて思っちゃったりもしたけど、私はものすんごく大好きだ。
「宇宙犬ライカ」、ライカって犬の事、この歌で初めて知った。人間の勝手に振り回されたライカ、だけど君だけが見られた景色があるはずだ。
どっかインチキくさくて、役に立つものなんかは一つもなくて、でもそんなお祭りだから、胸に込み上げてくるものがある。現ちゃんのピアノはとても優しくて、合間のバイオリンは、ちょっぴり寂しい。
「お祭り」。とってもいい曲。
かくれんぼの話を聞くと、決まって「ゲーム」を思い出す。ずっと隠れ続けている、終わりの一言を待ち続けている少女に思いを馳せる。
MAGUMIと狂市がコーラスしてる「いっそのこと!」、郷愁溢れるこのアルバムの中で、レピッシュ的な「不条理さ」が見られる曲。
インストルメンタルの「ドンパン」は、短いけれど大好きな曲だ。今はもういないちんどん屋さんみたいな音がどっか懐かしくてわびしい、レピッシュでは暴れ回ってた現ちゃんのメランコリックさがすごくよく見られる、大好きな曲だ。時々、無性に聴きたくなる。そして、胸に詰まる。
最初の方でこのアルバムの事を「あまり人には薦められないかもしれない」なんて書いちゃってるけど、「絶対零度」は一番とっかかりがいいかな、とちょっと思う。氷の上で滑って踊るしかないペンギンと人間の悲しいおかしみを、歌う。冷たく、キンコンした音が響く。
愛されたいともがくが空回りの切実な思い、哀れな鬼の話、自由研究の標本みたいな日本の子ら、このアルバムの中では珍しくストレートなスカの、でもやっぱり歌われるのは不器用で滑稽な人達、「かごめ」。上田現の組曲、「迷宮入り」。
このアルバムの後に出た「ファウル」という曲を、私はとある雑誌の「野球が題材の曲と言えば?」というアンケートの回答として答えた。規模の小さなものだったからこの曲を挙げたのは私一人だったけど、少数意見としてコメントは取り上げられたよ。「学校から帰ったら暗くなるまで野球をするしかなかった、あの頃」をピアノ1本で奏でる、「野球少年」。
アルバムタイトル曲「コリアンドル」は、列車から流れる景色、暑くじめついた空気、ゆっくりと過ぎる時間、そんな情景が目の前に浮かぶ、名曲だと、はっきりと思う。
「健康なうちに住み 健康な夢を持つ」。当たり前のそんな夢がさびしく歌われる。
「健康」。
アルバムの最後は、「一日の終わりに」。じわじわ迫ってくる、「夜」。
遊び疲れて帰る子供、どこからともなく匂ってくるカレーの匂い。誰しもが共通の記憶として持っている、一昔前の日本ならどこででも見られた、夕方から夜になる、あの感じ。
ノスタルジーとだけじゃくくれないかつての風景を、現ちゃんのもつ独特の世界と、曲ごとにいろんな情景を見せてくれる音たちで1つの作品として見せてくれる、とても完成度の高いアルバムだと思う。
今日久しぶりに聴いたけど、全部口ずさめる。
泣けてくるのは、このアルバム全体からにじみだしている郷愁によるものだけじゃないのが、悲しい。
47才って、早すぎるよね。
天才とか奇才とか、そういう言葉を使うと安っぽくなっちゃうけど、「彼だけのもの」というのが、はっきりとある人だった。(プロデュースした元ちとせが売れた時にはびっくりしたけど、でもやっぱり現ちゃんには才能があるんだ、と変に納得もした)
何かを作る能力のある人というのは世の中にたくさんいるけど、「その人にしか出来ない」ものを作ることの出来る人っていうのは、たぶんほんの一握りしかいない。
現ちゃんはその中の一人だったと、改めて確信する。
上田現という人の作品に触れられたことを、嬉しく思う。
2008年03月10日
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彼女自身はもう忘れているな…。
最初に買ったのとデジタルリマスター版の2枚持ってたりします。
この訃報は人生で、親戚を失った時同様、いや、それ以上の悲しみがありました。
現ちゃん、さよなら。
訃報にびっくり。
高校の時友人が無理やり貸してくれた「からくりハウス」しか知らないのですが、印象強い曲が多かった。
「コリアンドル」シノブさんの文読んで聞いてみたくなったよ。
>たもぎん
あー彼女すごい好きそうだね。て彼女のことでいいんだよね?
うちも高校の時レピッシュの中では現ちゃんが一番好きという友人がいたんだが、もう忘れてるだろうな・・・
>kinopさん
ブログ拝見したら、好きだったとかそんな段階じゃなく、本当に人生において大きな影響を受けられたんですね。彼のおかげで今の自分がいる、そんな存在がいるってすごい事だ。
>あかさたなさん
そう、ワタヅミの木は彼の作です。あの曲が売れたのは本当にびっくりしたけど、、でも彼の才能が世間に受け入れらたことがすごくうれしかった。
「コリアンドル」はいわゆるヒットポップスとは違うかもしれないけど、とてもいいアルバムです。自分の書いたつたない文章で聞いてみたいと思ってもらえたのはとても嬉しいです。
まだウジウジと悲しみながら「コリアンドル」を聞きながら検索で飛んできました。
このアルバムは本当に切なくて滑稽で愚かでしかしそれだからこそ愛らしい生き物達を描いているとても素晴らしいアルバムですね。
どの曲なんて選べない位です。
ただ随分昔に「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」という映画を観たのですが、主人公の少年が”宇宙に一人ぼっちで飛ばされた「ライカ犬」より僕は幸せだ”と自分に言い聞かせながら辛い現実を生きるという内容でした。
それでライカの存在を知ったのですが、どうしても言葉で表せない”ヘンな感じ”を抱いていたのを現ちゃんが
「人じゃなくて君を選んだ そこになにかでたらめがあるよね
歴史上の英雄として語られる所に ごまかしがあるよね」
と歌うのを聞いてソレ!そうなのそうなの!
と改めて【表現者としての鋭さ】を感じました。
ライカと現ちゃんは天国で遊んでるかな。。。。
コメントのお返事遅くなりすみません。
コメントありがとうございました。
もう4ヶ月もたってしまってるんですよね。何だか不思議な感じがします。もうなのか、まだ、なのか。
>切なくて滑稽で愚かでしかしそれだからこそ愛らしい
これがまさに上田現という人の魅力そのものな気がします。
「宇宙犬ライカ」は、人のエゴみたいなものも歌ってますよね。でもライカはその人類が見る事の出来なかったものを見て、そして今は自由に遊んでいることと思います。現ちゃんも一緒に。
上田現最後のアルバムとトリビュートが出るそうですね。
こういうものに対しては複雑な感情を抱いてしまうのですが(個人の遺志がどこまで反映されるのか、単なる商売の道具としか扱われないのではないか、という意味で)、関わる人たちがみな現ちゃんの事をよく知っていて、そして好きな人たちばかりなのだろうから、あまり心配は必要ないかな?とも思います。